2009年11月29日日曜日

生態系サービスって何?


そもそも,生態系サービスって何なのでしょう.
ウィキペディアでは,以下のように説明されています.

http://ja.wikipedia.org/wiki/生態系サービス
が,なんだか難しいですね・・・.

そもそも,スタートはどこだったのかを考えるには,ミレニアム・エコシステム・アセスメント(MA)というものを見なくてはなりません.以下のようにウィキペディアにもありますが,原典*1を見てみましょう.(個人的に分かりやすくて大事だと思う例も記します.正確に理解したい方はぜひ原典*1を参照ください.)
http://ja.wikipedia.org/wiki/ミレニアム・エコシステム・アセスメント

主に4分類から始まりました(もっと当初は1から3までだったと思います).

 1.供給サービス:生態系から得られた生産物.食糧が一番わかりやすい例ですね. 


2.調節サービス:水や炭素など,自然の循環(生態系プロセスといわれるもの)から得られる便益(利益だとちょっと狭い意味になるので,この表現で).例えば,二酸化炭素の吸収で気候変動(いわゆる「地球温暖化」)を緩やかにしたり抑えたりすること.感染症の流行を「自然に」抑えたり,オーストラリアのハチを「健康的に」育んだりする効果もあります. 


3.文化的サービス:生態系が関わっている文化・宗教・教育などへの影響.例えば屋久杉を見てドキドキしたり,富士山に登る信仰に身をゆだねたりできること.景色がキレイだなって思う「審美的価値」も含まれます. 


4.基盤サービス:上の3つを支えているもの.土地や水循環そのもの,光合成も入ります. 

他に保全サービスというものもあるようですが,抑えるべき基本は以上でいいと思います.「生態系が人の福利に与える(プラス・マイナス両方の)影響」とまとめておきます. MAは,生態系の変化と福利の変化を調べています.ちなみに福利とは"Welfare"の訳語で,「厚生」といわれているものです.社会的な需要供給の図の中で,「需要と供給と縦軸との間にできる図形の面積」としておきます.

なぜこの考え方が生まれたのでしょう.異論はあると思いますが,「生物多様性条約(Convention on Biological Diversity: CBD)」というのが一番のきっかけです.
http://ja.wikipedia.org/wiki/生物多様性条約


陸・海の生態系の破壊が止められなくなって,「生物が多様である状態を守るべきか」「守る場合にはどうすればいいか」を考えなければならなくなったことから国際的枠組みとして条約が作られました.


実は,「生物多様性を守ることを目的として」条約が作られた,と一般的説明で書かれていますが,「守るべきか」「守る場合のやり方」を検討するというのがより正確な理解であと私は考えます.


MAの原典にもあるように「ミレニアム開発目標」というのがあって,それに沿うようにするにはどうするかを考えるためにも,生態系サービスを詳しく見ていきましょうという流れで重要性が強調されています.つまり,「開発」も頭の中に置くのが本流なわけです.「保全」「回復」「だけ」が大前提ではないことに注意です.全部ひっくるめて考えるのが本流で,そこから「やっぱり開発すべき」「いやいや保全ないし回復すべき」と言わなければいけないんじゃないかなぁと思います.

もちろんながら,それを超えて「保全すべき」って事例もあんですよ.いろんな情報と知見を集めて,それでもやっぱり守んなきゃね,という事例は山ほどあります,逆もしかりです.今回はそこには立ち入らず,


あくまで本ブログはPESという話を説明するためだけに存在すると申し上げておきます

(うわっ・・・でかすぎやろ・・・)

その上で,漠然としていた生物多様性保全を,「人への影響」として分かりやすくするために生態系「サービス」と名付けることに賛同しています.


何のために守るのか.それは突き詰めれば人のため.そう考えることで実行可能性を上げましょうということです.「情けは人のためならず」の精神ですね


【参考文献】
*1: 『生態系サービスと人類の将来』,Millenium Ecosystem Assessment 編,横浜国立大学21世紀COE翻訳委員会 責任翻訳,オーム社,2007年.