TEEB,というのを最近知りました・・・.恥ずかしい限りです・・・.
http://www.teebweb.org/
EU大統領が話題になって,時々出てくる欧州委員会(European Commission)ですが,そこで進んでいるプロジェクトのリンクをたどっていくと,下記のURLにたどり着きます↓
http://ec.europa.eu/environment/nature/biodiversity/economics/
正式名称は,"The Economics of Ecosystems and Biodiversity" です.
まだPESの本を精読できていないので,手を出すのは後にしようと思いますが,「生態系版スターンレビュー」と言われているものです.
本家のスターンレビューは,そろそろ日本語訳が出るころだと思いますが,
(http://www.amazon.co.jp/Economics-Climate-Change-Stern-Review/dp/0521700809/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=english-books&qid=1260719290&sr=8-1)
気候変動に関する詳細な経済分析のレポートです.日本語訳が出れば,ますます読まなければなのですが・・・.
http://www.es-inc.jp/lib/archives/081229_154337.htm
こちらもリンクを張っておきます.どうも本ブログの先輩がいらっしゃいました・・・.いずれご挨拶をしなければです(゜_゜>)
http://homepage2.nifty.com/fujiwara_studyroom/kokusai/TEEBmid/TEEBmid.htm
今回はリンクのみです.生態系・生物多様性と経済学のお話は先輩方にお任せし,PESに集中していくつもりです.が,脱線するかもしれません・・・.
2009年12月14日月曜日
2009年12月5日土曜日
生態系サービスの複雑さ
毎度,なかなか良い感じに記述していない当ブログですが,今回は短いながら,「生態系サービスの複雑さ」を,目に見える形でご紹介したいと思います.
やはり,先だって紹介したMAは外せないようです.
やはり,先だって紹介したMAは外せないようです.
Nakashizuka (2009) より抜粋
矢印があっちこっちに飛んでますね.しかも,色が濃いほど社会経済との結びつきが濃くて,太いほど生態系サービスとしての関連の深さを示している図ですので,紹介します.
「Aという生物がBという生態系サービスを持っているとは言いにくい」ことは先だって示しました.
もちろん,いろんなことが言えますが,とりあえずは・・・
1) 社会経済と生態系サービスの結びつきの濃さ
2) 生態系サービスとしての性質そのものの濃さ
の2つが複雑で,一言では言いにくいってことだと思います.
2つの要素が複雑であることが分かれば,このように言えませんか.
1) 考え方を複雑にしている原因が分かった
2) 考え方が複雑であることを念頭に置いて語らなければならない
3) 考え方をもっと簡単にできる方法を考えなければ・・・
正しいかどうかは議論の余地がありますが,案外に3) が重要な気がするのは僕だけでしょうか・・・
本来は「みんなで考えましょう」と謳って,もちろん正確性・厳密性はものすごく大切ですが,「みんなにとって分かるように言う」ことを,同じくらい重要視する必要はあると思います.
【参考文献】
『生態系サービスと人類の将来』,Millenium Ecosystem Assessment 編,横浜国立大学21世紀COE翻訳委員会 責任翻訳,オーム社,2007年.
Nakashizuka T. (2009) Comment for the Planning Session by FFPRI at 56th Ecology Society of Japan, Morioka City.
2009年12月4日金曜日
CCS
CO2対策と,生態系サービスは切っても切れない関係にあります.
先だって紹介したミレニアムエコシステムアセスメントでも,CO2の定着を生態系サービスの1つとしてアピールしていました.
今回は,少し興味のわいたCarbon dioxide Capture and Storage (CCS)の,ほんとに簡単な紹介です.
詳しいことは,工学系の方の書かれたブログにあると思います.一般的説明は以下を参照ください.
http://www.jsrae.or.jp/annai/ yougo/165.html
どうやらとんでもなくCO2を吸収する液体があり, 日本で一生懸命開発されています(とニュースで言ってました・・・).
それを用いたりなんだりして,地中の帯水層(穴だらけの岩で構成され, 水がある)に,天然ガス採掘由来のCO2を流し込み, 帯水層の水が自然に場所を譲ることで貯蔵できてしまうものだったと思います.
実際に,新潟県長岡市で研究開発されていて,最近の新潟中越地震にも耐えたという報道がありました.
数百年で炭酸カルシウム(?だと思います・・・)として定着するので,「 化石燃料として採掘したものから出るCO2を再び地中に還す」 というコンセプトが好感されていると聞いています.実際に,ノルウェーでは1996年から行っているそうです.
生態系サービスとは必ずしも言い難いですが,海中に還していることを考えると,地殻を中心とした環境サービスを利用していると言えないでしょうか(無理やりすぎ?).
地震に本当に耐えうるのかも含めて,地学の基礎研究がとっても進んでいる日本の成果に注目したいものです.
先だって紹介したミレニアムエコシステムアセスメントでも,CO2の定着を生態系サービスの1つとしてアピールしていました.
今回は,少し興味のわいたCarbon dioxide Capture and Storage (CCS)の,ほんとに簡単な紹介です.
詳しいことは,工学系の方の書かれたブログにあると思います.一般的説明は以下を参照ください.
http://www.jsrae.or.jp/annai/
どうやらとんでもなくCO2を吸収する液体があり,
それを用いたりなんだりして,地中の帯水層(穴だらけの岩で構成され,
実際に,新潟県長岡市で研究開発されていて,最近の新潟中越地震にも耐えたという報道がありました.
数百年で炭酸カルシウム(?だと思います・・・)として定着するので,「
生態系サービスとは必ずしも言い難いですが,海中に還していることを考えると,地殻を中心とした環境サービスを利用していると言えないでしょうか(無理やりすぎ?).
地震に本当に耐えうるのかも含めて,地学の基礎研究がとっても進んでいる日本の成果に注目したいものです.
Google Powermeter
ちょっと横道にそれます.
すでにご存知かもしれませんが,GoogleがSmart Grid に本気を出してきました.
http://www.google.org/ powermeter/howitworks.html
ニュースで見たので検索したところ, おそらく上記のURLであると思います.
Google関連を利用することが多い方であれば, いずれはiGoogleのガジェットに設定して, 家の電気の使用状況を常に確認できるようです.
もう古い情報ですが,電気自動車ありき?, という制度のように感じます.自動車社会ならではと言いますか.
すなわち,電気自動車を家のプラグにつないでおけば, 太陽光発電や風力など,「安定供給しにくい(?) 自然エネルギー」経由の電力を蓄電することができ, それを夜や無風状態のときに用いたり, 電力会社に売ったりできるようで,いわば「電気自動車=充電池」 を個人レベルで管理できるためのサービスのようです.
渡米してしばらく住む方は,問い合わせてはいかがですか?
日本ではまだまだ,と考えるのは性急で, 某電力系やガス系にはすでに営業に言っているようです( ニュースで言っているので全く古い情報でしょうし,公表してもよさげです).
気候変動対策は,コペンハーゲンのCOP15を目前にして,いよいよ盛り上がってますね.名古屋での生物多様性条約締結国会議のCOP10も,それを超えて盛り上げていきたいものですね.
すでにご存知かもしれませんが,GoogleがSmart Grid に本気を出してきました.
http://www.google.org/
ニュースで見たので検索したところ,
Google関連を利用することが多い方であれば,
もう古い情報ですが,電気自動車ありき?,
すなわち,電気自動車を家のプラグにつないでおけば,
渡米してしばらく住む方は,問い合わせてはいかがですか?
日本ではまだまだ,と考えるのは性急で,
気候変動対策は,コペンハーゲンのCOP15を目前にして,いよいよ盛り上がってますね.名古屋での生物多様性条約締結国会議のCOP10も,それを超えて盛り上げていきたいものですね.
2009年11月30日月曜日
しばらくの予定
しばらくは,以下の本を読んでいく予定です.
Payment for Ecosystem Services (2009) Kumar P. and Muradian R. eds., Oxford University Press.
とてもいい本ですし,Kumarさんは,アジア圏の生態系サービス研究に一生懸命携わっているようです.
と同時に,日本に適した研究としては,まだまだ多くの課題が残されているように感じています.特に,専門家の皆さんではなく,いろんな方々が納得するには,もっとよいやり方があるように思います.
できるだけ早めに,上記の本に即した解説をUPします.もちろん日本にあいそうな話題を他からも持ってきます.
名古屋市でのCOP10 of CBD (第10回生物多様性条約締結国会議) までに,できる限り多く,このブログで考える材料を用意しますね.
定義の展開
例えばなのですが,PESを実現するには,理想的には以下を考えることが必要ではないでしょうか.
1) 失われた生態系サービスを(例えば開発した企業が)払うために,PESの市場を作らなくてはならない
2) 生態系サービスに関する市場は,まぁない(環境関係の大半(二酸化炭素の排出許可証取引などは別として・・・)はそう)
3) どうしたら,市場取引と生態系サービスの価格を決めることができるだろう・・・
生態系の市場って本当にできるのでしょうか.価格を示すにはどう考えればいいのでしょう.
一般的に,環境に関わるもの(生態系・ゴミ問題・大気汚染など)には市場がなかなかできないものです.環境を取引する市場がすっごくとってもほんとに少ないから,どうしても分かりやすく儲かる商品を重視してしまい,環境問題がないがしろになることが本当に多いです.経済学では外部不経済として扱い,なんとかしようとしています.
価格がつきにくい,環境や生態系・・・.とりわけ,PESを実現するためには,いろんな思いをしっかりと考えてほしいと考えるのは,私だけではないと思います.だからこそ,以下が必要になるのではないでしょうか.
1) PESを実現するために,例えば開発で失われる生態系サービスの経済価値を示さなくてはならない
2) 経済価値が分かって,初めて「生態系サービスの価格」が決まる
3) 「生態系サービスの価格」を中立的な第3者が計算して,それを参考に,開発する時に企業が払わなくてはならない金額が決まる
もちろんそう簡単にできる話ではありません.いいか悪いかも,それぞれの立場で考えるべきです.とりあえず,ここで考えたいのは,「生態系サービスに価格をつけなければPESを十分に実行できないのではないか」ってことに集中して,考えてみませんかってことだけです.
そこで,「もし生態系サービスの価格を決めなくてはいけない場合,どうすれば?」って話を考えたいと思います.
例えばですが,兵庫県神戸市を例に挙げて,「六甲山の生態系サービスって?」ということを考えたいと思います.読んでいただいている皆さんはそれぞれ思い描く自然環境によみかえてください.また,全くの余談ながら私は神戸っ子でして,六甲山が大好きで父とよく登ってました.
六甲山の生態系サービスっていろいろあります.今は特に紅葉したら,とってもきれいです.山に登ることが好きな人には,今の時期はたまらないでしょう.実際,遠景を絵に描いたり,登りながら植生を見たりするのは,子供心にたまらないものがありました.そんな体験って,誰しもどこかであるんじゃないでしょうか.
でも,ご存じない方もいらっしゃると思いますが,六甲山から街の中にイノシシがごくたまに降りてきます.
丹波地方は「牡丹鍋」にしますよね.特記するほどおいしいものです.同時に,適切な数を維持しなくては,人とイノシシが「持続可能な形で」共存できないかもしれないと,直感で想像しています.皆さんはどうですか?
これらを,生物多様性と絡めると,実はそんなに簡単に足し算と引き算で生態系サービスを計算できないよ,もし足し算と引き算をするにはこう考えなくてはいけないよっていったのが例えば Wallace (2007) だと思います.
生態系サービスは,人の社会から考えられたアイディアと思っていただいてもいいと思います.以前は「多面的機能」と言われて,主に生物や生態の方面から定義されていたように,個人的には記憶しています.
「多面的機能」についての解説は以下をどうぞ.
http://www.rinya.maff.go.jp/seisaku/sesakusyoukai/tamennteki/tamentekitop.html
とりあえず先ほどのお話に戻りましょう.森林を守って,いろんな影響(森林浴・紅葉・イノシシ)があり,しかもその影響はお互いに複雑に絡み合っていると想像できませんか?
紅葉がきれいで,森林浴に適した所に登山する人が多くて,そんな方のお弁当の匂いに惹かれてイノシシからこんにちは・・・.20年前に登山した時は,意外にありました.それに比べて,今はだいぶ共存しているのかもしれませんが,立場で意見は変わるでしょうね・・・.
PESを実現しようとして,取引価格を決めなければならないのに,例えば森林を守ったときの「値段」を調べようとしても,いろんな影響なり生態系サービスがとっても複雑に絡み合っていたら,単純な足し算や引き算でその「値段」を決められるのでしょうか?
多分ですが,とっても難しい話になると思います.ですので,「もし単純な足し引きでPESのお値段を決めるとしたら」と考えて,足し算と引き算がしやすいように考え直したのがWallace (2007) といえます.
ただ,どうすべきかは,なかなか難しいことのようですね.機会があれば煮詰めていきたいと思います.
詳しく知りたい方は原典を当たってください・・・というのはこのブログの趣旨に沿わないので,とりあえずは以下のお話だけ聞いていただけますか?もしかすると今後にお話しするかもです.
Wallace (2007) に限らず,今までの生態系サービスの考え方に疑問を持っている人はいっぱいいます.ですが・・・
「今までの生態系サービスの考え方の歴史とか流れ」があって,「流れも尊重しようよ」「そうしなかったら,昔と今を比較して,よくなってるかわからないじゃない!?」
と,言うのももっともですし,大切なことだと思います.
でも,さっさとしなければならないことなんです.
あまりだらだらしていられませんし,名古屋市で行われる生物多様性条約(CBD: Convention of Biological Diversity)の第10回目の会議など,すでにせまっています.
http://www.cbd.int/
気候変動枠組条約(http://ja.wikipedia.org/wiki/気候変動枠組条約)の15回目の会議(デンマークであるそうです.)の方が時期も早く,いろんな意味で注目度も多いのでしょうが,「CBDは日本で行われるのに」あまり報道されていません(洞爺湖で行われた国際会議も,直前までご存じなかった方は多いのではないですか?).
いわゆる「温暖化」のお話と実は平行で問題視されていて,しかも関わっている国の数は同様なのに,存外に注目度が低いように感じられます.
「温暖化」と「生態系保全」.少なくとも同様に大きく取り上げていきたいものですね.
Wallace K. (2007) Classification of Ecosystem Services: Problems and Solutions, Biological Conservation, Vol.139, pp.235-246.
1) 失われた生態系サービスを(例えば開発した企業が)払うために,PESの市場を作らなくてはならない
2) 生態系サービスに関する市場は,まぁない(環境関係の大半(二酸化炭素の排出許可証取引などは別として・・・)はそう)
3) どうしたら,市場取引と生態系サービスの価格を決めることができるだろう・・・
生態系の市場って本当にできるのでしょうか.価格を示すにはどう考えればいいのでしょう.
一般的に,環境に関わるもの(生態系・ゴミ問題・大気汚染など)には市場がなかなかできないものです.環境を取引する市場がすっごくとってもほんとに少ないから,どうしても分かりやすく儲かる商品を重視してしまい,環境問題がないがしろになることが本当に多いです.経済学では外部不経済として扱い,なんとかしようとしています.
価格がつきにくい,環境や生態系・・・.とりわけ,PESを実現するためには,いろんな思いをしっかりと考えてほしいと考えるのは,私だけではないと思います.だからこそ,以下が必要になるのではないでしょうか.
1) PESを実現するために,例えば開発で失われる生態系サービスの経済価値を示さなくてはならない
2) 経済価値が分かって,初めて「生態系サービスの価格」が決まる
3) 「生態系サービスの価格」を中立的な第3者が計算して,それを参考に,開発する時に企業が払わなくてはならない金額が決まる
もちろんそう簡単にできる話ではありません.いいか悪いかも,それぞれの立場で考えるべきです.とりあえず,ここで考えたいのは,「生態系サービスに価格をつけなければPESを十分に実行できないのではないか」ってことに集中して,考えてみませんかってことだけです.
そこで,「もし生態系サービスの価格を決めなくてはいけない場合,どうすれば?」って話を考えたいと思います.
例えばですが,兵庫県神戸市を例に挙げて,「六甲山の生態系サービスって?」ということを考えたいと思います.読んでいただいている皆さんはそれぞれ思い描く自然環境によみかえてください.また,全くの余談ながら私は神戸っ子でして,六甲山が大好きで父とよく登ってました.
六甲山の生態系サービスっていろいろあります.今は特に紅葉したら,とってもきれいです.山に登ることが好きな人には,今の時期はたまらないでしょう.実際,遠景を絵に描いたり,登りながら植生を見たりするのは,子供心にたまらないものがありました.そんな体験って,誰しもどこかであるんじゃないでしょうか.
でも,ご存じない方もいらっしゃると思いますが,六甲山から街の中にイノシシがごくたまに降りてきます.
丹波地方は「牡丹鍋」にしますよね.特記するほどおいしいものです.同時に,適切な数を維持しなくては,人とイノシシが「持続可能な形で」共存できないかもしれないと,直感で想像しています.皆さんはどうですか?
これらを,生物多様性と絡めると,実はそんなに簡単に足し算と引き算で生態系サービスを計算できないよ,もし足し算と引き算をするにはこう考えなくてはいけないよっていったのが例えば Wallace (2007) だと思います.
生態系サービスは,人の社会から考えられたアイディアと思っていただいてもいいと思います.以前は「多面的機能」と言われて,主に生物や生態の方面から定義されていたように,個人的には記憶しています.
「多面的機能」についての解説は以下をどうぞ.
http://www.rinya.maff.go.jp/seisaku/sesakusyoukai/tamennteki/tamentekitop.html
とりあえず先ほどのお話に戻りましょう.森林を守って,いろんな影響(森林浴・紅葉・イノシシ)があり,しかもその影響はお互いに複雑に絡み合っていると想像できませんか?
紅葉がきれいで,森林浴に適した所に登山する人が多くて,そんな方のお弁当の匂いに惹かれてイノシシからこんにちは・・・.20年前に登山した時は,意外にありました.それに比べて,今はだいぶ共存しているのかもしれませんが,立場で意見は変わるでしょうね・・・.
PESを実現しようとして,取引価格を決めなければならないのに,例えば森林を守ったときの「値段」を調べようとしても,いろんな影響なり生態系サービスがとっても複雑に絡み合っていたら,単純な足し算や引き算でその「値段」を決められるのでしょうか?
多分ですが,とっても難しい話になると思います.ですので,「もし単純な足し引きでPESのお値段を決めるとしたら」と考えて,足し算と引き算がしやすいように考え直したのがWallace (2007) といえます.
ただ,どうすべきかは,なかなか難しいことのようですね.機会があれば煮詰めていきたいと思います.
詳しく知りたい方は原典を当たってください・・・というのはこのブログの趣旨に沿わないので,とりあえずは以下のお話だけ聞いていただけますか?もしかすると今後にお話しするかもです.
Wallace (2007) に限らず,今までの生態系サービスの考え方に疑問を持っている人はいっぱいいます.ですが・・・
「今までの生態系サービスの考え方の歴史とか流れ」があって,「流れも尊重しようよ」「そうしなかったら,昔と今を比較して,よくなってるかわからないじゃない!?」
と,言うのももっともですし,大切なことだと思います.
でも,さっさとしなければならないことなんです.
あまりだらだらしていられませんし,名古屋市で行われる生物多様性条約(CBD: Convention of Biological Diversity)の第10回目の会議など,すでにせまっています.
http://www.cbd.int/
気候変動枠組条約(http://ja.wikipedia.org/wiki/気候変動枠組条約)の15回目の会議(デンマークであるそうです.)の方が時期も早く,いろんな意味で注目度も多いのでしょうが,「CBDは日本で行われるのに」あまり報道されていません(洞爺湖で行われた国際会議も,直前までご存じなかった方は多いのではないですか?).
いわゆる「温暖化」のお話と実は平行で問題視されていて,しかも関わっている国の数は同様なのに,存外に注目度が低いように感じられます.
「温暖化」と「生態系保全」.少なくとも同様に大きく取り上げていきたいものですね.
Wallace K. (2007) Classification of Ecosystem Services: Problems and Solutions, Biological Conservation, Vol.139, pp.235-246.
生物多様性と生態系サービスの関わり
ネットのいろんなお話を見ていると,「生物多様性と生態系サービスはどう違うの?」という質問があるので,ここで考えておきましょう.実際は専門のみなさんでも難しいことだと思います.まずは以下の考え方を提示したいと思います.
「生物多様性が生態系サービスを支えているんじゃないかな」
Nunes and van den Bergh (2001) では,生物多様性と人々の満足感を,4つの方向性でまとめています.
1)生物多様性⇒生態系⇒人の満足感
2)生物多様性⇒生態系⇒種の多様性⇒人の満足感
3)生物多様性⇒種の多様性⇒人の満足感
4)生物多様性⇒人の満足感
この研究の良し悪しは,考えていかなくてはなりませんが,上記の分け方で感じることはあるはずですよね.
と,言うことで,とりあえず1)から4)を自分なりに簡単に言ってみたいと思います. Nunes and van den Bergh (2001)を参考にすると以下のように整理できるのではないでしょうか.
1) = 生態系機能(人にとって役だっているとは実感できにくいもの)・サービス(人にとって役立っていると実感できるもの)が人を満足させる
2) = ハビタット(生物が棲む居住環境のこと)が人を満足させるので,景観の多様性を考えるべき
3) = 遺伝子から得られる科学的知見の多様性や種の数の多さが人を満足させる
4) = 次世代に生物を遺すことのうれしさ(遺贈価値:Bequest Value)・生物を残しているとひょっとしたら医療などに役立つかもしれない期待感(オプション価値:Option Value)・そもそも生物がいるだけでうれしい(存在価値:Existence Value)
いろいろ言えることはあって,以下が私の思いなんですが・・・どうでしょうか.
1) 生物多様性が生態系サービスを支えていること
2) 生物多様性が人に及ぼす影響は,「生態系サービスだけではない」こと
生物多様性が生態系サービスを支え,その影響は生態系サービスだけではないことを,生物学・生態学・経済学の専門家が集まって,本気を出した例があります.それがChristie et al. (2006) です.
彼らが使ったカテゴリーを紹介しましょう. 「生物多様性」って何だろう? 彼らは,一生懸命に分かりやすい分類を考えました.以下にまとめます.
1) 大分類:「生物多様性」
2) 中分類:「生態学的な考え方」・「人間を重視した考え方」
3) 小分類:
「生態学的な考え方」⇒ 「Habitat Quality (生物が生きている生息域の質)」「Ecosystem Processes (生態系が果たす役割)」
「人間を重視した考え方」⇒「Rare, Unfamiliar Species of Wildlife (絶滅危惧種とか)」「Familiar Species of Wildlife (普通にいる動植物とか)」
生態系サービスは,すべての分類に関わっていると考えられます.
「あれ? じゃあ生態系サービスって何なの?」と感じた人は,とっても真面目にこのブログを見ていただいてる人です.実際,とっても複雑に絡み合っていて,「Aという生物はBというサービスだけを持っている」とは言えないんです.
「これにも役立ってるし,これにもだし,あぁそれもそうだった」なんてことになってるみたいです. イメージがつきにくくって,大変です.ですので,皆で一生懸命考えなくてはならないことともいえると思います.
次は,生態系サービスという定義そのものへの反対意見を取り上げたいと思います.
Nunes P. and van den Bergh J. (2001) Economic Valuation of Biodiversity: Sense or Nonsense?, Ecological Economics, Vol.39, pp.203-222. Christie M., Hanley N., Warren J., Murphy K., Wright R. and Hyde T. (2006) Valuing the Diversity of Biodiversity, Ecological Economics, Vol.58, pp.304-317.
「生物多様性が生態系サービスを支えているんじゃないかな」
Nunes and van den Bergh (2001) では,生物多様性と人々の満足感を,4つの方向性でまとめています.
1)生物多様性⇒生態系⇒人の満足感
2)生物多様性⇒生態系⇒種の多様性⇒人の満足感
3)生物多様性⇒種の多様性⇒人の満足感
4)生物多様性⇒人の満足感
この研究の良し悪しは,考えていかなくてはなりませんが,上記の分け方で感じることはあるはずですよね.
と,言うことで,とりあえず1)から4)を自分なりに簡単に言ってみたいと思います. Nunes and van den Bergh (2001)を参考にすると以下のように整理できるのではないでしょうか.
1) = 生態系機能(人にとって役だっているとは実感できにくいもの)・サービス(人にとって役立っていると実感できるもの)が人を満足させる
2) = ハビタット(生物が棲む居住環境のこと)が人を満足させるので,景観の多様性を考えるべき
3) = 遺伝子から得られる科学的知見の多様性や種の数の多さが人を満足させる
4) = 次世代に生物を遺すことのうれしさ(遺贈価値:Bequest Value)・生物を残しているとひょっとしたら医療などに役立つかもしれない期待感(オプション価値:Option Value)・そもそも生物がいるだけでうれしい(存在価値:Existence Value)
いろいろ言えることはあって,以下が私の思いなんですが・・・どうでしょうか.
1) 生物多様性が生態系サービスを支えていること
2) 生物多様性が人に及ぼす影響は,「生態系サービスだけではない」こと
生物多様性が生態系サービスを支え,その影響は生態系サービスだけではないことを,生物学・生態学・経済学の専門家が集まって,本気を出した例があります.それがChristie et al. (2006) です.
彼らが使ったカテゴリーを紹介しましょう. 「生物多様性」って何だろう? 彼らは,一生懸命に分かりやすい分類を考えました.以下にまとめます.
1) 大分類:「生物多様性」
2) 中分類:「生態学的な考え方」・「人間を重視した考え方」
3) 小分類:
「生態学的な考え方」⇒ 「Habitat Quality (生物が生きている生息域の質)」「Ecosystem Processes (生態系が果たす役割)」
「人間を重視した考え方」⇒「Rare, Unfamiliar Species of Wildlife (絶滅危惧種とか)」「Familiar Species of Wildlife (普通にいる動植物とか)」
生態系サービスは,すべての分類に関わっていると考えられます.
「あれ? じゃあ生態系サービスって何なの?」と感じた人は,とっても真面目にこのブログを見ていただいてる人です.実際,とっても複雑に絡み合っていて,「Aという生物はBというサービスだけを持っている」とは言えないんです.
「これにも役立ってるし,これにもだし,あぁそれもそうだった」なんてことになってるみたいです. イメージがつきにくくって,大変です.ですので,皆で一生懸命考えなくてはならないことともいえると思います.
次は,生態系サービスという定義そのものへの反対意見を取り上げたいと思います.
Nunes P. and van den Bergh J. (2001) Economic Valuation of Biodiversity: Sense or Nonsense?, Ecological Economics, Vol.39, pp.203-222. Christie M., Hanley N., Warren J., Murphy K., Wright R. and Hyde T. (2006) Valuing the Diversity of Biodiversity, Ecological Economics, Vol.58, pp.304-317.
PESへの架け橋
まず,生態系サービスの区分けに関しまして,訂正です.
「保全サービス(Preserving Services)」というのを探してみましたが,見つけられませんでした.
もし, 生態系サービスの意味で,保全サービスの説明をご存知の方は,コメントをください.
さて,今回は,「生態系サービスへの支払(Payments for Environmental / Ecosystem Services: いずれもPES)」というトピックです.Engel et al. (2008) *1の定義からスタートしましょう.
1.自発的(強制ではない)取引であること
2.生態系サービスや,それを支える土地の利用が,「はっきりと」とらえられていること
3.生態系サービスに一人以上の売り手と買い手がいること
4.売り手は生態系サービスを必ず供給すること
これだけでは何かわかりにくいですよね・・・.Engel et al. (2008) から,例を考えてみましょう.まず場面の設定です(設定を「ものすごく」簡単にしていますので,詳しく知りたい方は原典をご覧ください).
1.川があって,上流にも下流にも人が住んでいます.
2.上流側には森があるとします.
3.下流側は,上流の森のおかげで,きれいな水を得ることができます.
このまま幸せにいけばいいのですが,上流の人が,森の木をすべて切ってしまって,畑に変えなければ,生きていけなくなりました.ここで,上流にあった森は,「きれいな水を下流に供給する」という生態系サービスを提供していました.種類としては,供給サービスと考えていいでしょう.
上流の人は,生きていくために仕方なく,森を切り開いて,食糧を作り,それを食べていきます.森を切り開いたことで,「食糧」というメリットを得たわけです.
一方,下流の人は,きれいな水を飲めなくなりました.今まであった生態系サービスを失ったことになります.
ただし,他の活動を無視してください(「上流の人は飲み水をどうしているんだ?」「下流の人はどうやって食べているんだ」ということも,ここでは考えません.疑問がある方は,すいませんが原典を読んでくださいね・・・).上流にはメリット,下流はデメリットだけがあります(という設定で話を進めます・・・わかりやすさのためと,意図を汲んでいただければ幸いです (;_;) ).
ここで困ったことに,上流の人は,もう森を復活させる余裕がないようです.この状態で,上流も下流もなんとかやっていくしかありません.
そこでPESの出番です.下流の人は,(設定上!)せめて「上流が減らした生態系サービス(きれいな水の供給)」 を補償してほしいと考えるでしょう.損ばかりしているのですから.それに対して上流の人は,(設定上!)「食糧」という得ばかりしています.
そうこうしているうちに,(どんな形でもいいんですが,とりあえず・・・)「仲裁する人」が出てきて,話し合いをしようと言いました.「下流の人が損した分,上流の人が『きれいな水の供給』にお金を出してはどうだろうか?」なくなった生態系サービスと同様の浄水場を作ってはどうか,というのです.
例えばなのですが,これがPESです.「失われた生態系サービスを(どのような形であれ)補償するためにお金を払う」 と考えてよいと思います.
でも,実際,森を全部切ってしまう代わりに,浄水場を作られても・・・と思う方が多いと思います.私もそうです.少し単純化しすぎてしまいましたが,ここで,前回の「ミレニアム開発目標」を思い出してください.(ちなみに,ほとんど説明していませんでしたが,「ミレニアム開発目標」は,「開発をする言い訳」ではありません.)
貧しい国や人にとって,先進国から「熱帯林が減ってるから,皆とにかく守れ」 と言われても,そうそう納得しないことは想像できます.当然守られるべき,「たくさん食べたい」「最低限でもいいからお金がほしい」という思いが,まずあるからです.ですので,「すべての開発」を止めることはできません.同時に,「すべての生態系を守る」ということができないのも,想像できると思います.
そこで,以下のような考え方をしてはどうでしょうか.
1.持続可能(長く続けられるってことですね)な形で生態系サービスと開発を両立させる道を見つける.
2.開発した人は,それによって失われた生態系サービスの価値の分だけお金を出して,サービスを回復/補償する(生態系を回復するとは限りません).
3.以上のために「生態系サービスの経済価値」を調べるべき(生物多様性に,必ずしも値段を付けるわけではなくて・・・).
単純化しすぎて,間違いを含んでいるかもしれませんので,十分に注意していただきたいのですが,ミレニアム開発目標の本質や,PESのイメージをつかむのは,ここから始めた方が,今後の展開もわかりやすくなると思います.
イメージをつかんでいただくように伝えることは難しいですね.皆さんはそれぞれの立場で行っていらっしゃると思います.
このブログでは,「ちょっと専門家の方からみると問題かな」ってとこまで,踏み込んでしまうかもしれません.
ただ,「~とおもんですけど・・・」などの表現で,そういうことは投げかけるようにしますので,気が向いたらそれぞれで議論ください.
【参考文献】
*1: Engel S., Pagiola S. and Wunder S. (2008) 'Designing Payments for Environmental Services in Theory and Practice: An Overview of the Issues', Ecological Economics, Vol.65, pp.663-674.
「保全サービス(Preserving Services)」というのを探してみましたが,見つけられませんでした.
もし, 生態系サービスの意味で,保全サービスの説明をご存知の方は,コメントをください.
さて,今回は,「生態系サービスへの支払(Payments for Environmental / Ecosystem Services: いずれもPES)」というトピックです.Engel et al. (2008) *1の定義からスタートしましょう.
1.自発的(強制ではない)取引であること
2.生態系サービスや,それを支える土地の利用が,「はっきりと」とらえられていること
3.生態系サービスに一人以上の売り手と買い手がいること
4.売り手は生態系サービスを必ず供給すること
これだけでは何かわかりにくいですよね・・・.Engel et al. (2008) から,例を考えてみましょう.まず場面の設定です(設定を「ものすごく」簡単にしていますので,詳しく知りたい方は原典をご覧ください).
1.川があって,上流にも下流にも人が住んでいます.
2.上流側には森があるとします.
3.下流側は,上流の森のおかげで,きれいな水を得ることができます.
このまま幸せにいけばいいのですが,上流の人が,森の木をすべて切ってしまって,畑に変えなければ,生きていけなくなりました.ここで,上流にあった森は,「きれいな水を下流に供給する」という生態系サービスを提供していました.種類としては,供給サービスと考えていいでしょう.
上流の人は,生きていくために仕方なく,森を切り開いて,食糧を作り,それを食べていきます.森を切り開いたことで,「食糧」というメリットを得たわけです.
一方,下流の人は,きれいな水を飲めなくなりました.今まであった生態系サービスを失ったことになります.
ただし,他の活動を無視してください(「上流の人は飲み水をどうしているんだ?」「下流の人はどうやって食べているんだ」ということも,ここでは考えません.疑問がある方は,すいませんが原典を読んでくださいね・・・).上流にはメリット,下流はデメリットだけがあります(という設定で話を進めます・・・わかりやすさのためと,意図を汲んでいただければ幸いです (;_;) ).
ここで困ったことに,上流の人は,もう森を復活させる余裕がないようです.この状態で,上流も下流もなんとかやっていくしかありません.
そこでPESの出番です.下流の人は,(設定上!)せめて「上流が減らした生態系サービス(きれいな水の供給)」 を補償してほしいと考えるでしょう.損ばかりしているのですから.それに対して上流の人は,(設定上!)「食糧」という得ばかりしています.
そうこうしているうちに,(どんな形でもいいんですが,とりあえず・・・)「仲裁する人」が出てきて,話し合いをしようと言いました.「下流の人が損した分,上流の人が『きれいな水の供給』にお金を出してはどうだろうか?」なくなった生態系サービスと同様の浄水場を作ってはどうか,というのです.
例えばなのですが,これがPESです.「失われた生態系サービスを(どのような形であれ)補償するためにお金を払う」 と考えてよいと思います.
でも,実際,森を全部切ってしまう代わりに,浄水場を作られても・・・と思う方が多いと思います.私もそうです.少し単純化しすぎてしまいましたが,ここで,前回の「ミレニアム開発目標」を思い出してください.(ちなみに,ほとんど説明していませんでしたが,「ミレニアム開発目標」は,「開発をする言い訳」ではありません.)
貧しい国や人にとって,先進国から「熱帯林が減ってるから,皆とにかく守れ」 と言われても,そうそう納得しないことは想像できます.当然守られるべき,「たくさん食べたい」「最低限でもいいからお金がほしい」という思いが,まずあるからです.ですので,「すべての開発」を止めることはできません.同時に,「すべての生態系を守る」ということができないのも,想像できると思います.
そこで,以下のような考え方をしてはどうでしょうか.
1.持続可能(長く続けられるってことですね)な形で生態系サービスと開発を両立させる道を見つける.
2.開発した人は,それによって失われた生態系サービスの価値の分だけお金を出して,サービスを回復/補償する(生態系を回復するとは限りません).
3.以上のために「生態系サービスの経済価値」を調べるべき(生物多様性に,必ずしも値段を付けるわけではなくて・・・).
単純化しすぎて,間違いを含んでいるかもしれませんので,十分に注意していただきたいのですが,ミレニアム開発目標の本質や,PESのイメージをつかむのは,ここから始めた方が,今後の展開もわかりやすくなると思います.
イメージをつかんでいただくように伝えることは難しいですね.皆さんはそれぞれの立場で行っていらっしゃると思います.
このブログでは,「ちょっと専門家の方からみると問題かな」ってとこまで,踏み込んでしまうかもしれません.
ただ,「~とおもんですけど・・・」などの表現で,そういうことは投げかけるようにしますので,気が向いたらそれぞれで議論ください.
【参考文献】
*1: Engel S., Pagiola S. and Wunder S. (2008) 'Designing Payments for Environmental Services in Theory and Practice: An Overview of the Issues', Ecological Economics, Vol.65, pp.663-674.
2009年11月29日日曜日
生態系サービスって何?
そもそも,生態系サービスって何なのでしょう.
ウィキペディアでは,以下のように説明されています.
http://ja.wikipedia.org/wiki/生態系サービス
が,なんだか難しいですね・・・.
そもそも,スタートはどこだったのかを考えるには,ミレニアム・エコシステム・アセスメント(MA)というものを見なくてはなりません.以下のようにウィキペディアにもありますが,原典*1を見てみましょう.(個人的に分かりやすくて大事だと思う例も記します.正確に理解したい方はぜひ原典*1を参照ください.)
http://ja.wikipedia.org/wiki/ミレニアム・エコシステム・アセスメント
主に4分類から始まりました(もっと当初は1から3までだったと思います).
1.供給サービス:生態系から得られた生産物.食糧が一番わかりやすい例ですね.
2.調節サービス:水や炭素など,自然の循環(生態系プロセスといわれるもの)から得られる便益(利益だとちょっと狭い意味になるので,この表現で).例えば,二酸化炭素の吸収で気候変動(いわゆる「地球温暖化」)を緩やかにしたり抑えたりすること.感染症の流行を「自然に」抑えたり,オーストラリアのハチを「健康的に」育んだりする効果もあります.
3.文化的サービス:生態系が関わっている文化・宗教・教育などへの影響.例えば屋久杉を見てドキドキしたり,富士山に登る信仰に身をゆだねたりできること.景色がキレイだなって思う「審美的価値」も含まれます.
4.基盤サービス:上の3つを支えているもの.土地や水循環そのもの,光合成も入ります.
他に保全サービスというものもあるようですが,抑えるべき基本は以上でいいと思います.「生態系が人の福利に与える(プラス・マイナス両方の)影響」とまとめておきます. MAは,生態系の変化と福利の変化を調べています.ちなみに福利とは"Welfare"の訳語で,「厚生」といわれているものです.社会的な需要供給の図の中で,「需要と供給と縦軸との間にできる図形の面積」としておきます.
なぜこの考え方が生まれたのでしょう.異論はあると思いますが,「生物多様性条約(Convention on Biological Diversity: CBD)」というのが一番のきっかけです.
http://ja.wikipedia.org/wiki/生物多様性条約
陸・海の生態系の破壊が止められなくなって,「生物が多様である状態を守るべきか」「守る場合にはどうすればいいか」を考えなければならなくなったことから国際的枠組みとして条約が作られました.
実は,「生物多様性を守ることを目的として」条約が作られた,と一般的説明で書かれていますが,「守るべきか」「守る場合のやり方」を検討するというのがより正確な理解であると私は考えます.
MAの原典にもあるように「ミレニアム開発目標」というのがあって,それに沿うようにするにはどうするかを考えるためにも,生態系サービスを詳しく見ていきましょうという流れで重要性が強調されています.つまり,「開発」も頭の中に置くのが本流なわけです.「保全」「回復」「だけ」が大前提ではないことに注意です.全部ひっくるめて考えるのが本流で,そこから「やっぱり開発すべき」「いやいや保全ないし回復すべき」と言わなければいけないんじゃないかなぁと思います.
もちろんながら,それを超えて「保全すべき」って事例もあるんですよ.いろんな情報と知見を集めて,それでもやっぱり守んなきゃね,という事例は山ほどあります,逆もしかりです.今回はそこには立ち入らず,
あくまで本ブログはPESという話を説明するためだけに存在すると申し上げておきます.
(うわっ・・・でかすぎやろ・・・)
その上で,漠然としていた生物多様性保全を,「人への影響」として分かりやすくするために生態系「サービス」と名付けることに賛同しています.
何のために守るのか.それは突き詰めれば人のため.そう考えることで実行可能性を上げましょうということです.「情けは人のためならず」の精神ですね.
【参考文献】
*1: 『生態系サービスと人類の将来』,Millenium Ecosystem Assessment 編,横浜国立大学21世紀COE翻訳委員会 責任翻訳,オーム社,2007年.
目的
まず,このブログの目的を記します.
私は経済学的評価が専門ですので,経済学的評価を念頭に置いて記していきます.一般的なブログと同様に,「論理」よりも「意見」や「感想」を中心に書いていきます.専門家の方にアピールするよりも,そもそも知らなかった方や,興味はあるけど考える暇がない方にどれだけ魅力的に伝えられるかを探し,その腕を鍛える意味で書くつもりです.
とはいえ,あまりに「感想」に偏りすぎてしまうと意味がないうえ,研究論文の内容に反映できるように勉強したことを書くつもりです.当然ながら,以下のルールを守ってください.
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文責:Hayao_Haruki, Nov. 30th 2009.
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