2010年5月9日日曜日

勢いで第3章

この章では,インドのBhoj Wetlandを事例として,生態系サービスの供給側と受け手側でどのように交渉すべきか,そのために必要なものは何かを明らかにしています.

使っているのは,制度分析と開発(IAD: Institutional Analysis and Development)という方法で,現状を「交渉に使用されるルール」「コミュニティの特徴(属性)」「自然界の属性」の3つに分類していって,どんな影響があるかを書きあげていこうというものだそうです.

彼らが強調しているのは,外部者(External Actor)の存在です.

Bhoj Wetlandは,水質汚染と沈泥で,水を蓄えておく容量(キャパシティ)がどんどん少なくなっているそうです.それによって,生態系破壊はもとより,洪水などの地域影響,健康影響も起こるかもしれません.

原因として目されているのは,Bhoj Wetlandに流れ込んでいる川の上流で富栄養化や農薬流出,あと土地の浸食が挙げられています.

流域管理,というのですが,上流と下流とで利害関係が生じるのは,Bhoj Wetlandに限った事ではないようで,本事例もかなりややこしいことになって,交渉のテーブルに着かせるのが一苦労のように見受けられます.

そこで,「誰が」「どこで」「何を」「どの程度」「どうしているか」を,IADの枠組みに乗っけて整理したところ,NGOなどの第三者的な外部者なくしては上手くいかないこと,利害関係者はむしろ互いに協働するつもりでいること,お互いにアクセス可能な制度・施設などがあればもう少し利害関係者の行動パターンも変わりうることが示されています.

第三者機関というのはどの分野でも重要なようです.実際はなかなかうまくいかないのかもしれませんが,交渉のテーブルを設けることは,生態系サービスの損失にも有効なようです.

Kumar and Muradian (2009) Payment for Ecosystem Services, Oxford University Press, New Delhi.